「さて、じゃあ其々の紹介と行こうか」


ロイとの挨拶が済んだエドワードは、改めて室内を見渡し部下たちの注意を促す。
エドワードの声に、それまで耳で聞きながらも仕事をしていた部下たちも一様に手を止め、エドワードへと顔を向ける。


「今聞いていたから分かってはいると思うが、今日からここで一緒に働くことになったロイ・マスタング少佐だ。士官学校を首席で卒業した秀才だぞ。おまけに昨年国家錬金術師の資格も取得した逸材だ。銘は”焔”―焔の錬金術師だ。お前達がへまやらかした暁には、きっと少佐の焔がお見舞いされると心しておけ。怒らせるなよ」


途中まで真面目に紹介していたエドワードの言葉が、後半明らかにふざけて面白がっているとしか思えないものに変化していた。
そんなエドワードの言動にも慣れているのか、ロイ以外の者達は苦笑したり大袈裟に驚いたりと、一般の司令室では考えられないような緩〜い雰囲気に満たされている。


エドワードの隣に立ちながら、この先この職場で上手くやっていけるのだろうかと、柄にもなく少々不安になるロイだった。
そんなロイの不安など全く頓着せず、エドワードの部下紹介は続く。


「少佐、この金髪の美人が俺の副官の1人、リザ・ホークアイ中尉。非常に優秀で銃の扱いにも必要以上に長けている。口説くのは自由だがめちゃくちゃ怖いので怒らせないように気を付けろ」

「リザ・ホークアイ中尉です。よろしくお願い致します少佐。少将、発言にはお気を付けになられた方が良いかと思いますが」


ロイに向かってにこやかに笑みを見せ敬礼したホークアイ中尉は、次の瞬間にはシャキーンっと音がするのではないかと思われる素早さで銃を構えていた。
その銃は既に安全装置が外され、いつでも発射できる状態となってエドワードに向けられていた。

上官が上官なら部下も部下だ。


どこの世界に自分の上官に本気で銃を向ける副官が居るというのだ・・・・。
どこか遠いところに行きたくなったロイを余所に、エドワードとホークアイの冗談のような会話は続いた。


「あー悪い少佐。続きするな」


待つ事3分。ようやくホークアイとの勝負にエドワードが負けることで決着をみたのだろう。
当初の目的であった部下の紹介へとエドワードが戻ってきた。


「こちらの黒髪の美人が俺のもう1人の副官、マリア・ロス少尉だ。ホークアイ中尉よりは厳しくなくて優しい。この司令室のオアシスのような存在だ」


どんな紹介なんだか・・・・。
まだ2人目だというのにもう疲れたように感じるのは何故だろう。


「マリア・ロス少尉です。よろしくお願いします、マスタング少佐」

「こちらこそよろしく、ロス少尉」


女性2人の紹介が終わったエドワードは、次に男性陣へと視線を向け、手前に居た者から紹介し始める。


「こっちのタバコ銜えたのっぽがジャン・ハボック少尉。その隣のふてぶてしい顔してるのがハイマンス・ブレダ少尉。少佐と一緒で士官学校を首席で卒業した頭脳派だ。んでもってそっちの目が開いてるんだか開いてないんだか分からんのがヴァトー・ファルマン准尉で、抜群の記憶力をしている。何か調べ物がある時はまず准尉に聞いてみろ。最後に、あっちに居る眼鏡がケイン・フュリー曹長だ。彼は通信機器のスペシャリストで盗聴が得意だ」


・・・・・・・・・・・・・・。

女性陣にも増して投げやりに聞こえる紹介にもう溜息も出てこない。
オリヴィエで型破りな上官に免疫が付いていたロイをしても、このエルリック少将は一筋縄では行かないような気がしてきた。型破りにも程がある。
何もかもが規格外の司令室では、案の定、適当に紹介された事に腹を立てた部下たちが、こぞって将軍であるエドワードに反論していた。


「少将!何スか、のっぽとタバコって!!俺の紹介それだけっ???」

「ふてぶてしいってどういう事ですか!頭脳派は良いとして、ふてぶてしいって!!!」

「目が開いてないって・・・・。気にしてること指摘するなんて酷いです少将・・・・」

「眼鏡って何ですかっ!しかも盗聴が得意なんて、そんな紹介酷いですよ!大体、盗聴しろって指示するのはいつだって少将じゃないですかぁ!!!」

「何だよっ、端的かつ正確な人物描写だろうが。どこが問題なんだよ」


ロイへの挨拶もそこそこにエドワードへと詰め寄る者、落ち込む者、泣きそうになる者。
それに対して、心底不思議そうに反論するエドワード。
全員、自分の意見を主張しまくり、どうにも収集が付かなくなってきた場を収めたのは、
やはりというか、ホークアイ中尉だった。
無言で銃を構える彼女の姿に全員が恐怖し矛先を収めるのを見たロイは、確信する。

この司令室の真の支配者は彼女だ、と・・・・。