文化祭パニック
11
「一護〜、そろそろ行くぞぉーーーー!」
「・・・・・・・・・・・・・はぁ?・・・ああアレね・・・」
「何だなんだっ!元気ないぞっ!これからが楽しいっていうのにさ〜〜〜!」
「全然楽しくねェから・・・」
「煩いよ、啓吾。僕の耳の横で怒鳴らないでよ」
「何だよ、水色。お前だって楽しみにしてたじゃないかよっ」
「だからってそんな大声で怒鳴り散らさなくたって良いだろう」
「ちぇっ、詰まんねェな。イイじゃないかよ〜」
嫌そうな顔を隠すことなく、眉間の皺をいつも以上に深く刻んだ一護は、啓吾に腕を掴まれて引き摺られるように歩いていた。
大声で会話しながら仮装喫茶の衣装のままで廊下を闊歩する一護達はかなり目立っていた。
何しろメイドとハ○トリ君と新郎が連れ立って歩いているのだから。
周囲の視線に頓着する事なく、ブツブツと文句を言いながらも楽しそうに会話をしている水色と啓吾が憎い。
人の気も知らないで何呑気な事言ってんだこいつ等は。
一護は胸の内でひたすらに毒を吐いていた。
望んだわけでもないのに、これから地獄へと連れて行かれるのだ。
自分を嵌めた2人に文句の一つや二つ言いたくなっても仕方がないだろう。
現在の時刻は12時半。
一護達はクラスでの仕事を終えた後、昼食をとり、一休みする間も殆どなくある場所へと向かっていた。
その場所とは、校庭のど真ん中に設営された野外ステージ。
ミス&ミスターコンの会場だった。
毎年テーマを持って作られるステージの今年のテーマは『天国』。
何故に天国?と思わなくもないが、単に昨年のテーマが地獄だったから今年はその反対にしたらしい。
何年も続いていると段々とネタも無くなってくるのだろう。
だが、安易に決まったテーマと反比例するようにその熱意は燃え上がって行く一方らしく、年毎に装飾は派手に豪華になっている。
10メートルもの長さを誇る舞台の上には左右に大理石らしく見えるギリシャ風の柱が建てられ、緑鮮やかな蔦が絡まっている。
床には色とりどりの花が咲き乱れ、鳥や蝶までがあしらわれている。
背景は雲の上に宮殿が描かれ天使やキューピッドが美しい羽根を広げて飛びかっており、
主にピンクとホワイトを基調にした装飾はどこかメルヘンチックだった。
そして極めつけがガラスの階段だ。
舞台左側から緩いカーブを描いて天へと続く、正に『天国への階段』そのものだった。
ガラスと言っても実はプラスチックで、人が乗ったら潰れてしまうような強度しか持ち合わせていなかったが、
芸術的な美しさは見事なものだった。
そんな、見る者を呆然とさせる力を持ったステージは恐ろしいほどの存在感で校庭のど真ん中に鎮座していた。
間違いなく近年稀に見る大作だと思われる。
制作に携わった美術部員達はさぞや満足している事だろう。
「すげ〜〜〜美術部の奴ら頑張ったなー!何だよこの派手な舞台はっ。噂には聞いてたけどマジでスゲぇな!」
素直に驚いている啓吾。
「確かに凄いね・・・・。確か天国っていうテーマだったっけね」
どこか乾いた笑いを浮かべている水色。
「―――――――」
そして言葉もなく苦々しげな顔を浮かべている一護。
美術部渾身の力作も、一護にしてみればとんでもなく悪趣味なものにしか思えない。
こんな、女が好きそうなメルヘンチックな舞台に自分が立つのかと思うとそれだけで腹が立つ。
美術部の奴らは何考えてるんだ。
只でさえ嫌々出場するのに、その舞台がこれでは尚更気持ちが下降してくるのも当然だろう。
―――――――― 逃げ出してぇ・・・・。
「さ、行くぞ一護!エントリー者の控室はあっちだ!」
人の憂鬱など全く頭にない啓吾に思わず殺気を送ってしまう一護。
啓吾は自分が鈍感だったことに感謝すべきだろう。
死神としての一護を知っているものだったら背筋に震えがくるほどの殺気だったのだから。
そんな事には一つも気が付かず、意気揚々と啓吾が向かった先は、コンテストに出場する生徒達の為の控室だった。
ド派手なステージの舞台裏には態々二つのテントが張られており、男女別に待機できるように配慮されていた。
何とも有り難い気配りと言えるかもしれない。
テントの入口ではエントリー者のチェックが実施されており、それ以外の者は立ち入りを禁止されているようだった。
一護達もチェックを受けた後に番号札を渡され、テントの中へと入って行く。
一護達がテントに入ると、複数の生徒達から突き刺さるような視線が向けられた。
それはそうだろう。
相変わらずメイドとハッ○リ君と新郎なのだから。
少しでも他生徒よりも抜きん出たいと思っている者にとってはかなり強力なライバル出現といったところだろう。
ただ、インパクトはあるがミスターコンの衣装としてはどうなのかという疑問はあるが・・・。
なんたって、メイド・・・以下略。
男子生徒用のテントの中には、一護と同様、推薦によって無理やり出場する羽目になった者も何人かいるようで、
付き添いと引き離されてしまい、一様に心細そうに緊張した顔つきで俯いている様子が多々みられた。
特に一年生にその傾向は多いようだ。
一護達の異様な格好にも気が付く様子がないことからも、その緊張が伝わってくるというものだ。
逆に、ニ・三年生になると過去の経験がモノを言うのか、余裕綽々で雑談をしたり、自分の衣装をチェックしたりと、
各々が気楽に自分の出番を待っているようで、緊張した様子は見受けられなかった。
「俺達の出番は一番最後だから、それまでにゆっくり着替えでもして待ってようぜ」
「・・・・はっ?」
「そうだね。時間はたっぷりとありそうだからね。良かったね」
啓吾と水色がまた一護に分からない会話を笑顔でし始めた。
だが、その内容はといえば、結構嬉しいものだった。
一護は、仮装喫茶の衣装のままで出場させられるのかと思っていたのだ。
只でさえ出たくないのに、この恥ずかしい格好でと思うと更に嫌だったのだ。
でも、そうか、着替えていいのか。
じゃあ制服を持ってこよう。
少しだけ浮上した一護がそう思った時だった。
再び啓吾と水色によって地獄に叩き落とされたのは・・・・。
文化祭パニック11話目です。
いよいよミスターコンの会場まで漕ぎ付けました〜!
でも何やらまた一護に災難が・・・次回はどうなる事やら;;;
更新遅くて本当に申し訳ありません(土下座)
神の御心でお許しください。
それではまた次回でv
2008.4.29