文化祭パニック







12

「いってぇっーーー!!!何すんだよ、一護!」

「うるせぇっ!何すんだはこっちのセリフだっっ!!!」

「何でだよっ!俺はただ着替えようって言っただけじゃないか」

「何が『着替えようって言っただけ』だっ!ふざけんなっ!!!!!」

「ふざけてないって!俺は真面目だ。なあ、水色」

「そうだね、ふざけてはいないね。ただ、一護が嫌がることも分っていたけどね」

「何でっ?!水色だって『面白そうだね』って言ってたじゃないか」

「まあね。万が一にも一護が着てくれる可能性に掛けてみたんだけどね。やっぱり無理だったみたい」

「水色〜〜〜〜」


水色の無情な発言に涙する啓吾を守ってくれる者は、勿論誰一人存在しない。
怒り心頭の一護の攻撃にひたすら耐えるのみである。
一護の攻撃をしゃがみ込んで耐え、頭を抱える啓吾は哀れだったが、自業自得とも言えた。
よく見ると、啓吾は、先程のおかしな忍者姿からサッカー姿へと変化しており、その右手には一枚の布が握りしめられていた。
手のひらの中に収まってしまうくらい小さなその布が、この事態の原因を招いたブツであった。



ビキニの海パン。


啓吾は、自分はプロサッカーチームのレプリカユニホームでバッチリと決め、水色は人気プレーヤーが契約しているメーカーのテニスウェアで爽やかさを演出。
そう。啓吾達はスポーツマン姿で爽やかさと格好良さを醸しだし、そのコンセプトの元でコンテストに臨むつもりだったのだ。
狙いは悪くない。
部活動や習い事をしている出場者の中には、普段愛用の練習着や道着に身を包み、自らの逞しさや格好良さをアピールする者が少なくないからだ。


ただ・・・・。
そこで何故野球やバスケット等に出来なかったのか・・・・・一護の衣装は競泳用のシャープな水着だった。
啓吾曰く、スラリとしていても一護は筋肉ついててスタイルが良いから絶対似合うから!との事。
まあ、褒めてはいるのだろうがそんなことは問題ではない。
競泳選手でもなければ、筋肉フェチの露出狂でもない一護が、人前で授業でもないのに水着になる必要がない。


只でさえ出場したくないコンテストなのに、更に赤っ恥をかくなんて考えられない。
そんなことはお馬鹿な啓吾だって分るだろうに。
いや、分らないからこそ啓吾なのだろうか。
そして、水色は更に質が悪い。
絶対に一護が着ないと分っていて啓吾を止めないのだからサドである。
キレる一護と虐げられる啓吾が見たかっただけなのだろう。








「とにかく、俺はこんなの着るくらいなら絶対出ねぇからな!ってか、もう止める。じゃあな」


散々啓吾を痛めつけて気が済んだのか、ようやく手を弛めた一護は、そう言いながら踵を返して控室を出て行こうとする。
大体、最初からこんなものに出場する義理も理由もないのだ。この機に乗じて逃げるのが得策である。
が、そう上手く事が運ばないのが人生というものだ。


「ちょっと待ってよ、一護。そう急いで結論出さなくたって良いじゃない。もう水着着ろなんて言わないからさ、ね」

「急いで結論出した訳じゃねぇよ。俺は最初から出たくなかったんだからな」

「まあ、それはそうだけど、さっきまでは渋々だけど出る気はあったんでしょ?だったらもう少し付き合ってよ」

「イヤだ」

「そう言わずにさ。さっきの水着のことは謝るから許してよ。ね、啓吾も悪い事したって反省してるからさ。ね、啓吾」

「えっ、でも俺悪くなっ・・・ぶっ」


一護を取りなそうとする水色の配慮も理解せず、不満そうに口を尖らす啓吾の口を塞ぎ黙らせる。
見掛けに寄らずめちゃ強い水色だった。


「それに、エントリー者は一度手続きした後はもうキャンセルは出来ないんだからここからは出られないよ」

「なっ、そんなん聞いてねぇぞ」

「だって、言う必要ないでしょ?キャンセルする理由なんて無いんだからさ」


ニコッと、なんとも晴れやかで腹黒い笑顔を振りまく水色が怖い。
結局、最初から一護を逃がすつもりなんて無く、ただからかいたかっただけなのだろう。
敵に回したら大変な男であることは間違いない。


「ね、一護。その衣装のままで良いからさ、僕たちと一緒に出ようね」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・制服に着替る」


不承不承といった感じで一護が吐き捨てると、すかさず水色の反論が来た。


「制服の着用はコンテストのルールで却下」


何時もと同じ格好では面白くない、という単純な理由からこのルールは決まったそうである。
確かに、周囲を見回してみれば私服姿が目に付く。
中には啓吾達のようにユニホーム姿のものもチラホラといるが、制服を着た生徒は一人も居ない。
一護にとっては、なんとも迷惑極まりない決まり事である
結局仮装衣装のままで出場することが決定的になった一護の機嫌は下降の一途を辿っていった。





控室で一護達が騒いでいる間に、いつの間にかコンテストは開幕していたようである。
男女交互にステージに上がって繰り広げられるコンテストは、女子が5番、男子が6番目まで進んでいた。
水色が13番目、一護が14番目、啓吾が15番目にステージに上がることになっている。
最悪な瞬間まで後数分。
耐え難い現実が重く一護にのし掛かっていた・・・。





















文化祭パニック12話目です。
何とも進みの遅い展開ですみません(>_<)
一体どこまでダラダラと書くつもりなのかあたしは・・・。
既に何を書きたかったのか見失っているという噂も・・・ごにょごにょ;;;

毎回毎回更新遅くて本当に申し訳ありません(土下座)
神の御心でお許しください。
それではまた次回でv

2008.10.5