文化祭パニック
10
「お前ら、いい加減に帰ったらどうなんだ?」
「ええぇーーさっき来たばっかりなのに何でそんな事言うの一護お兄ちゃん!」
「そうだぜ、一兄!ひでェ事言うなよなっ!」
「一護ぉーーーお父さんは悲しい!何で追い出そうとするんだぁ〜〜〜」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
自分の発言に予想通りの反応が返ってきたことに、一護は知らず溜息をつく。
まあ素直に引き上げるとは思っていなかったので、特に驚きはない。
ただ・・・疲れる。
今の時刻は11時半。
黒崎家一行がここに来てから、かれこれ1時間が経過していた。
店内は相変わらず混雑しており、席は全て埋まっていた。
おまけに一護達のクラスの外には店に入るのを待っている客達で長蛇の列が出来ていた。
普通では考えられないほどのその列の長さに、文化祭実行委員から列の整理を指導されてしまう有様だった。
何故そんな事になったのかといえば、全ては黒崎家。いや、白哉の存在が原因だった。
白哉が校内を歩いているのを見ていた者達や、渋々店を出てきた客達が、中にいる超絶美形の話を興奮しながら話まくっているのだ。
あそこの店には見たこともない綺麗な人がいる。そんな微妙なニュアンスの噂が更なる噂を呼び、
このような事態に発展してしまったのだ。
お陰で、黒崎家の様子を・・・ではなく、確実に白哉を見ていたいがために、一度入店した客達が中々席を立たなくなってしまったのだ。
実際、満席のテーブルの多くは、既にケーキや飲み物など何も乗っておらず綺麗なものだった。
一般の喫茶店とは違い、文化祭の出し物である店で水のサービスは無い。
注文したものを平らげれば、後は軽く談笑して出ていくしかないのだ。
それなのに・・・・ここにいる者達は皆が皆、チラチラと黒崎家が座っているテーブルを盗み見ては、キャーキャーと騒いでいる。
そんな状況に、一護達フロア担当の生徒達も、食べ終わった(飲み終わった)なら出ていってくれと、
仮にも客である者達にあからさまには言えずに困っていたのだ。
こうなったら自分が言うしかないだろう。
身内が迷惑をかけているのがありありと分かる状況に、一護も無視を決め込むわけにもいかなくなったのだ。
というよりは、啓吾や水色の訴えるような視線に逆らえなかったのだ。
そして冒頭の会話へと戻る。
他の客達が動かないのなら、白哉を動かせば良いのだ。
シンプルだが非常に難しい問題だった。
なにしろ、白哉は文化祭に来たのではなく、一護を見に来たのだから・・・・・。
だが、こうなってしまっては仕方がない。一護は覚悟を決めた。
「さっき来たばっかりじゃねぇだろ。もう一時間は経ってるし、食い終ってるじゃねぇか。だったらもう用はないだろ」
「そんな事ないもん!一護お兄ちゃんが働いてるの見るの楽しいもん!」
「そうそう、一兄のそんな真面目な格好滅多に見られないもんな」
「一護ーーー!お父さんはお前の事をいつでも見守ってるぞっ!!!」
「・・・・・・・・・・・・・」
「あのなぁ・・・・俺は見世物じゃねぇ。しかも店は混んでるんだよ。もう食い終った奴らがいつまでも
居座ってたら外で並んでる奴らが入れないだろうが。そうだろ?分かったらもういい加減他のところ行けよ。
ここにずっと居たって面白くないだろうが」
「「「おもしろいよ(ぞ)!!!」」」
「・・・・・・・・・」
白哉以外の声が綺麗にハモる。
頭が痛い。
そして無言の白哉が怖い。
自分がどんどん疲労で体力も精神も消耗していくのが分かる。
だが、やらねばならない。
「駄目だ。これ以上ここにいるって言うなら俺は裏方に回る。もう店には出てこない」
「「「ええぇぇぇ〜〜〜!そんなのズルイ!!!」」」
「ズルくない。もう決めた。じゃあな」
「一護お兄ちゃん!」
「一兄!」
「一護ぉ〜〜!」
「・・・・・・・・・・・」
相変わらず無言の白哉に戦々恐々としながらも、他3人の叫びを切って捨て、
一護は裏方とフロアを区切っている幕の奥へと入って行こうと、家族へ背を向ける。
これ以上付き合っていては埒が明かない。
そんな一護の様子に諦めたのか、遊子が最後の引き留めにかかる。
「一護お兄ちゃん!じゃあさ、今はもう出るけど、後でまた来てもいい?」
遊子の思いがけない質問に一護は足を止める。
出来れば校内を一通り回ったらそのまま帰って欲しい。内心でそう思いつつも、それくらいは譲歩してもいいだろうと軽く考え、
一護はうっかりと素直に返答してしまった。
そして激しく後悔することになる。
「別に良いけど、俺が次にフロアに出るのは午後の2時半だぞ?それでもいいのか?」
「うん!大丈夫!他のところいっぱいあるから時間なんてすぐ経っちゃうよ。ねっ、夏梨ちゃん」
「ああっ!また来るからな一兄」
「お父さんも来るぞ〜〜〜一護嬉しいかぁ〜〜」
「嬉しいわけあるか!うるせェんだよっバカ親父!!!」
一心のあまりの鬱陶しさにまたもや一護の怒りが爆発。一心の左頬へカウンターを見舞う。
そして唐突に気付く。
校内を色々回る?
たしか遊子はそう言っていた。
まあそうだろう。時間を潰すためにもあちこち見て回るのは当然だ。
だがしかしっ!
隅から隅まで回られたらミスターコンの事がバレてしまうかもしれないっ;;;
ヤバイ・・・・どうにかしなくては。
ミスターコンは屋外での特設ステージで開かれる。
ならばっ・・・・。
「そっそういえば、午後13時頃に体育館でなんだか演劇部の舞台があるらしいぞ!それに行ってみたらどうだっ」
「演劇部の舞台?ふ〜〜ん。それって面白いの?」
「面白いぞっ!うちの高校の演劇部は上手いって評判なんだっ(嘘だけど)!だから、なっ!見てこいよ」
少しでも自分の危機を避けようと一護は必死だ。
そんな一護の動揺を知ってか知らずか、遊子はなんだか乗り気がしない素振りをする。
やきもきしながらどうにかしようと更に一護は言葉を募る。
「舞台だけじゃなくてなんだかコンサートとかもあるらしいぞ!そっちもついでに見てこいよ、なっ!」
「うん、分かった!じゃあ行ってみるね。ね、夏梨ちゃん」
「そうだな。一兄がそんなに言うなら行ってみるか!」
ほぉ〜〜〜。良かった。内心冷や汗を掻きながら一護は胸を撫で下ろす。
そんな一護を胡乱な目つきで見ている白哉には、だから気が付かなかった。
「じゃあ一兄、後でまたな」
「またね、一護お兄ちゃん」
「・・・・・・・」
最後まで無言の白哉が不気味で仕方ない。
絶対に何か報復がある。嫌でも一護は確信してしまう。
何で俺がこんな目に。
何度も思った事だが愚痴らずにいられない。
自分が可哀想で仕方がない一護だった。
その後、白哉のいなくなった店内は、混んではいるが客が滞留することはなくなった。
弊害として、行列に並んでいた客達が店から出てくる白哉を目撃し、ならば店に入る価値なしと判断し
どこかに四散したという。
苦労は減ったが売上も確実に減った。
どちらにしても困った客であったことは間違いない。
そして、彼らはまた来るのだ・・・午後に・・・・。
一護を含め、クラスの生徒達はマリアナ海溝よりも深いため息をついた。
文化祭パニック10話目です。
兄さま一言も喋らず・・・(汗)
次回はどうなる事やら・・・。
だらだら書いているこのシリーズですが、後3話くらいで終わらせられたら
良いなぁ思っとりますv
何とか年内に!(まだ1月ですけど・・・汗)
それではまた次回でv
2008.1.20