おまけ 〜ロイの疑問〜 「ねえ、父さん。あの人が錬成した時バシィーンって音がしたんだけど、アレって何の音?」 「ん?ああ。それは恐らく両手の平を打ち付けた音だ」 「手を叩いたって事?」 「そうだ。以前私が見たときも両手を打ち付けて錬成していたからな」 「そうなんだ」 「言っておくが、コレも秘密だからなロイ。他言は無用だぞ」 「分かった。でも、どうして両手を打ち付けるんだろう?父さん何か知ってる?」 「父さんが知っているわけないだろう。錬金術に関しては全くの素人だ。ただ、錬金術師の中には体や装備品などに錬成陣を予め描いておいて、その場で錬成陣を書く手間を省いている者もいるようだ。恐らくあの子もそうしているのじゃないか?」 「そうか。戦闘中に錬成陣を描いてたらやられちゃうかもしれないもんね」 「そうだな。ただ、軍に正式に入隊している国家錬金術師はそう多くない。戦闘に参加することは滅多にないのが現実だ」 「”錬金術師は大衆のために”だもんね」 「ああ」 「そうか、じゃあ僕も国家錬金術師になったらそうしようっと」 難しいと分かってはいても、子供の夢見る力は無限大だ。自分が国家錬金術師になれると信じている。 我が子故の贔屓目を差し引いてもロイは賢い。時間は掛かってもいつか自分の夢を実現する力を持っている。 恐らく、ロイは本当に国家錬金術師になる。 そして、憧れのエドワードと出会うだろう。その時が非常に楽しみなレオン・マスタングだった。 後に、手袋に描いた錬成陣で焔を操るようになるロイだが、その発想の原点はこういう事だった。 そして、自分が憧れていた鋼の錬金術師は、一切錬成陣を描くことなく手を合わせるだけで錬成することを知った時は心底驚いた。 そんな事が出来る錬金術師など聞いたことがない。 どうやったらそんなことが出来るのだろう? 一度意を決して聞いてみたことがあるのだが、その時は遺伝だと言って誤魔化された。 そんなわけあるかっ! 憧れの錬金術師に対して、ロイは、大きな背中と正義感の固まりのような実直な人物像を思い描いていた。 それなのに現実はどうだ? 大きいと思っていた背中は自分よりも小さく細い。正義感に溢れ清廉潔白だと思っていた性格は大筋で破綻していた。 いつもいつもいいようにからかわれ、こき使われ、理不尽な扱いを受けているロイは、思い描いていたのとは余りにも違う憧れの人の姿に時々眩暈がすることがある。 だが、その事実にも係わらず、ロイは現状に概ね満足していた。 なんといっても彼は、”あの”鋼の錬金術師なのだから。 セントラルに異動になって直ぐに父から連絡があり、彼と会ってどうだった?と聞かれたことがある。見た目の印象よりも実はかなり曲者で人の悪い父である。10年以上もこの瞬間を待っていたのだろう父の、楽しそうな、どこか皮肉そうな笑顔を浮かべている光景が目に浮かんだが、 それでも、ロイの答えは勿論。 「最高」 だった。 END |
「Memories of blue」蛇足です(笑)
色々と消化不良な感は否めませんが、これでひとまず終止符を打ちます。
チビロイがエドワードにも父にも翻弄されているのが気の毒ですが、
コレはコレで楽しいので良しとします(笑)
ではでは、長い間お付合いいただきまして本当にありがとうございましたv
2012/07/06