文化祭パニック









色づき始めた木々の間を木枯らしが吹き抜け、秋の気配が濃厚になった11月初旬。
一護が通う高校では文化祭の準備が大詰めを向かえていた。
生徒達は何とか間に合わせるべく、連日下校時刻を大幅に過ぎての作業をしており、教師達もこの時期ばかりはしょうがないと半ば諦め、夜7時までの作業は黙認していた。


一護のクラスの出し物はオーソドックスに喫茶店。但し、仮装喫茶店だったが・・・。
これも今や定番の模擬店で今更驚くような出し物では無かったが、何しろ一護は高校に入って始めての文化祭である。何で自分が仮装なんてしなければならないのかと反対票を投じたが、クラスメイト多数の賛成票により反対者の意見は完全に無視され結局は今に至るのである。


決まってしまえば、オレンジの髪に眉間の縦ジワという見てくれとは正反対に真面目な一護である。渋々ながらも自分の衣装の制作に励んでいた。せめてフロア担当ではなく裏方に回りたいと思っていた一護だったが、とことんくじ運が無いのか、晴れて仮装しなければならないフロア担当に決まってしまった・・・。


衣装は全員が思い思いのアイデアを出し、それを厳正なるくじ引きによって決めた。スパイ○ーマンやエルフ、ドラキュラ伯爵やドラ○もん。それだけならばどうという事も無く普通(?)だが、中にはアニメのネコ耳ロリコン美少女キャラクター(一体どんなアニメなんだか・・・)のくじを引いてしまった男子も居た。その生徒はどうにか女子生徒に代わってくれと頼み込んだが、面白そうな事が大好きで、他人事には残酷な女子高生にそんな懇願は聞き入れられる筈も無く、泣く泣く自分の衣装の制作のために指を血だらけにしながら針仕事をしていた。不器用だったのだ。つくづく哀れだ・・・・。


ちなみに一護が引いたくじには『タキシードを着た新郎』と書いてあった。かなりまともな仮装である。仮装というよりは正装だ。
本当に良かったと、一護は内心ほっと胸を撫で下ろしていた。


衣装を作るとはいっても、一護をはじめ針仕事など出来ない生徒も多く、主に裁縫の得意な生徒が10人ほど中心となって、フロア担当生徒15人の衣装の制作を進めていた。一護たち裁縫不得意組みは、小物作りやなみ縫いのみで何とかなる所だけを指示されて作業しているのだ。


授業中には見せないような熱心さで準備に励んでいた生徒達だったが、やはり何事も順調には行かないもので、当然のように作業は遅れていた。
そして文化祭当日一週間前ともなれば作業も追い込み期間に突入し、生徒達のラストスパートには鬼気迫るものが感じられるようになって来た。
衣装だけでなく教室の飾り付けやメニュー表の作成、商品のケーキやドリンク等の手配やコップや皿の搬入手配などの最終チェックetc・・・。
やらねばならない事は山のようにあった。
結果、夜の7時になっても帰宅しない生徒が続出。教師達に早く帰れと怒られ、未練を残しながら渋々帰途に着くという光景が連日のように続く事になった。


帰宅組の一護も普段なら夕方の4時には家に帰ってくつろいでいるところだが、文化祭準備に追われる様になってからは帰宅が夜の7時から8時になることが当たり前となり、問題が発生するようになった。
一護自身は帰宅が遅くなったからといって特に家で何をする訳でもないので良いのだが、問題は別の所にあった。
兄の白哉である。


兄とはいっても血の繋がりは無い。
その前に人間でもない・・・。白哉は死神だ。
しかも尸魂界護廷十三隊六番隊隊長である。


普通の人間ならば、生きている間はまず知る事の無い世界<尸魂界>


その世界にあって守護を担当する戦闘集団。それが護廷十三隊である。霊的能力の高い者のみが死神になれる。
その中でも隊長副隊長といえばその能力たるや桁違い。別格である。
しかも朽木白哉といえば名門貴族朽木家の出身。知らぬ者の無い存在である。その彼が何故人間界に居て、且つ一護の兄などになっているのか・・・。


ルキアを救出する為に尸魂界に向かった一護は、すったもんだの末に何とか現世に戻ってきた。その後暫くして何故か白哉が黒崎家の一員になった・・・。
どうやったのかは分からないが、白哉は一護の兄となっていたのだ。
勿論、遊子と夏梨の兄であり、一心の息子でもある。
鳶が鷹を産んだのかとからかわれるほどに全く似ていない親子であり兄弟である。


隊長である白哉が居ない六番隊がどうなっているのか。
・・・・それは恋次のみぞ知るというやつである。
きっと死ぬ思いで仕事している事であろう。
一応、白哉も週に一回ほどは尸魂界に戻り隊長の決済を待っている書類に目を通し、隊首会へも出席しているのでそれ程の混乱はないようだ。
まあ、あくまでも白哉の見解ではあるが・・・。


白哉が黒崎家の一員に無理やりなってから早半年。白哉と出会ったのが春だったのに、季節は今や秋真っ只中。
最初白哉に対しては悪感情しか持っていなかった一護だが、激しい戦いの中でいつの間にか白哉に対して恋にも似た感情が湧き起こり、その一挙手一投足を意識するようになっていた。


それは白哉にしても同じで、最初はただルキアの霊力を奪って死神となっただけの取るに足らない存在としか思っていなかったのに、短期間で卍解まで成し遂げた一護に対して、驚愕の思いとともに何故か一護ばかりに向かい目を逸らす事の出来ない自分の気持ちに気付いた。


朽木白哉といえば、何事にも心動かされる事なく誰に対しても冷めた感情しか見せた事が無いので有名だった。
それが何故か一護の行動や言葉には感情を激しく動かされ、今まで誰にも見せた事がないような表情を曝け出してしまうのだ。
それがどういう事なのか、考えなくても分かる事だ。


結果、戦いが終わった後の白哉の行動は自分でもびっくりするものだった。
つまり一護を追いかけて現世に来てしまったのだ。しかも黒崎家の一員として・・・。


今までの白哉しか知らない者にとっては世界がひっくり返ってしまったのかと思うほどの驚愕だった。
勿論この行動は一護をも驚かせた。
現世に戻れば二度と会うことは無いと思っていた相手に、学校から帰宅した自宅で『おかえり』と出迎えられたのだ。一護の驚きたるや想像を絶するものだったろう・・・。


驚きが過ぎてしまえば残るのは嬉しいという感情だ。
どうやって一心や妹達に嘘の記憶を植えつけたのかは分からないが、特に変な後遺症や行動も見られないので一先ず安心した。
白哉自身は霊体であれば家族に姿が見えないはずなので、義骸である事は間違いない。が、それ以外のことは考えてもよく分からない。
白哉の居ない尸魂界がどうなっているのか、山爺の許可は得ているのか等々。
聞いても白哉は心配するなと言うだけで答えてくれない。
結局考えても聞いても分からないのなら、それ以上のことを詮索するのは無駄だとばかりに早々に放棄し、一護は白哉との家族生活を満喫することにした。


最初白哉を『兄貴』と呼ぶことに慣れずに、何度も白哉と呼んでしまい遊子や夏梨に不審がられたが、それもいつの間にか慣れ、今や『白哉』と呼ぶほうが恥ずかしくなってしまった。
二人っきりの時には『白哉』と呼ぶように言われているのだが、中々難しく使い分けの出来ない一護だった・・・・。


一緒に暮らして分かった事は、白哉が以外にも甘やかし上手だという事だ。
今まで妹達の良い兄として、甘やかす事はあっても甘やかされる事の無かった一護は、白哉の差し伸べる手が気恥ずかしくて仕方がなかった。
どうやって甘えたら良いのかが分からないのだ。
ただ、自分のことを一番に考えてくれる人が居るという事実にひどく安心していることは良く分かる。
この手を離すことは考えられない。


そしてもう一つ分かった事。それは激しい独占欲である。
甘やかすのと同じかそれ以上に白哉は一護を雁字搦めにしている。
自分以外には目を向けることを嫌ったのだ。
家族以外の者に一護が意識を向けようものなら、その後のお仕置きが酷くなる・・・。どんなお仕置きなのかは想像に任せるが;;;
ただ、白哉の独占欲は一護にとっても望んでいるもので、口では逆らったりするが本心では嬉しくてしょうがなかった。
今まで自分のことをそこまで望んでくれる者は居なかった。勿論心から分かり合える親友は居たが、それとは全く違うのだ。


しかし、その独占欲による弊害は周囲にも被害を及ぼすのが厄介なのだ。
今回の文化祭準備期間中にもその被害は一護の周りにいる者を巻き込んだ。

















白哉×一護SS第二弾です。
何か説明文ばっかりで申し訳ない上に、
長くなりそうなので続けてしまいました;;
もしよろしければお付き合い下さいvv
どうなるのかは全く未定・・・。
自分でも何も考えず書いているので(^^;
行き当たりばったりでどうしようもありません;;;

2005.1.16