初めての体験
「白哉。何やってんだお前?」
「別に、何もしておらん」
「って、確かに何もしてないけどよ・・。はっきり言って邪魔だぜあんた」
「うっ・・。黙っておれ。今考えているところだ」
「いいからどけよ。俺が買ってやるからさ」
「余計なことはするな。これしきの事なんでもない」
「そうは言ってもさっきからじーーーっっっと見てるだけで何にもして無いじゃんかよ」
「考えておるのだ。指図は受けん」
呆れたような一護と、狼狽したような白哉の声。
常にない様子の白哉は、傍からは分からないが実は焦っていた。
その焦りは勿論一護にしか分からないものではあったが。
そんな調子で、なにやら言い争いをしている二人の後ろにはずらーっと並んだ人人人・・・・。
その顔には少なからず怒りの表情が浮かんでいるが、白哉の氷のような雰囲気がその怒りを跳ね除けている。
ここは駅の券売機。
しかも土曜日の昼間。
家族やカップルで出掛けようとしている人の集団がここぞとばかりに集まっている。
そして、そんな混雑の中で白哉が挑戦してるのは切符の購入だ。
現世に来てから初めての電車体験。
その第一歩として当然ながら切符の購入という行為が待ち受けていた。
最初から無理だろうと思っていた一護は、白哉の分も買おうとしたのだが、
プライドの高い白哉の事。助けを借りるなど以ての外だった。
一護の行為を袖にし、むきになって何が何でも自力で買おうとしている白哉は、迷惑以外の何者でもない。
イライラして待っている人々の怒りは尤もな事だろう。
白哉の横で、とっくの昔に購入した一護は半ば呆れながら白哉を待つ。
一体何時になったら自分達はここから出発することが出来るのだろうか。
というより、自分の買ったこの切符が無駄になるのではないか。
そう思わずにいられない一護だった。
白哉が占領している券売機の前からは次々と人が居なくなり、左右の券売機に移動していた。
正しい選択に一護は心の中で思わず頭を下げた。
こんな迷惑野郎を連れてきた責任は自分にある。
そう思うと詫びずにはいられない一護だった・・・・。
END
電車初体験の兄様(笑)
こんなヘタレ兄様ですが、気に入って頂けたら幸いですv
2007.1.19