いたずら 「一護お兄ちゃーーん!」 「一兄ーー!」 階下から聞こえる妹達のけたたましい声に、なんだなんだっ!と 思いつつも一護は律儀に返事をする。 「あーーーっ何だっ?」 「「ちょっと下に下りて来てーー!」」 「わーったよ今行く!」 「しょうがねぇな・・・たくっ。何なんだ?」 ぶつぶつ文句を言いながら、宿題を片付けていた手を止めて 一護は階下へと向かった。 どうせ何かを取って欲しいとか、親父が五月蝿いからどうにかしてくれとか、そんなところだろう。 何の気なく下りてきた一護の視界に入ってきたのは、 居間で妹達に囲まれている白哉だった。 これはかなり珍しいことで、白哉は殆どの時間を自室で過ごす。 決して妹達が鬱陶しいとか、嫌いとかではなく、 単に一人でいるのが好きだからだ。 ついでに言えば、一応翻訳家としての仕事があるため、 昼間は部屋で仕事をしているからでもある。 そんな白哉が土曜日の昼間に妹達と一緒に居るというのは、かなり珍しい。 一体何をしているのだろ。 つい部屋の外からぼーっとそんなことを考えていた一護に、 妹達が声をかける。 「そんな所で何やってるんだよ一兄」 「一護お兄ちゃん、早く早く!」 「あっ・・ああ」 一護が3人が座っているテーブルに向かって足を向けたとき、白哉が不意に振り返ろうとした。 「ああーーー!!白哉お兄ちゃん、まだ駄目ーーー!!!」 「そうなのか?」 「うんまだ駄目だよ、白兄!」 「わかった」 鼓膜が破れるかと思うほどの遊子の叫び声と、一瞬だけ見えた白哉の様子に一護はびくっと体を振るわせた。 何やら見慣れない顔の白哉がいたような気がする。 何が普段と違ったんだろう。 疑問を抱えつつ止まってしまった足を再度踏み出す。 「一護お兄ちゃん、こっちこっち!」 白哉の左側に立っている遊子が一護を手招く。 妙にテンションが高く興奮している。 その右横でニヤニヤ笑いを浮かべている夏梨も不気味だ。 「何なんだ?兄貴がどうかしたのか?」 声をかけながら白哉の前に立った一護は絶句する。 絶句したままあんぐりと口が開き、目が真ん丸くなった。 「似合うと思わない?一護お兄ちゃん!」 「すっげぇ格好良いよね!白兄!」 今まで黙っていたのを吐き出すかのように妹達が囃し立てる。 そこには、緩いスクエア型の細身のレンズに、細いシルバーフレームの眼鏡をかけた白哉が居た。 なんで眼鏡なんかかけているのか、どうやって手に入れたのか、 そんな疑問が頭をよぎる。 しかし、そんな疑問を発するよりも先に、 一護の顔が見る見るうちに真っ赤になった。 その細身のシルバーフレームの眼鏡は、恐ろしいほどに白哉に似合っていた。 こんなに眼鏡が似合うなんて思いもよらなかった。 普段からクールで怜悧な表情の多い白哉だが、 眼鏡をかける事でその冷ややかな印象が更に増している。 ただでさえ白哉の顔に未だドキドキする一護にとっては、 更にやっかいな状況が増えたことになる。 どうしよう・・・。なんだか動悸が激しくなったような気がする・・・。 「一兄顔赤いよ。何で?」 「っ!!!!」 夏梨の突っ込みに言葉に詰まる。 それはそうだろう、実の兄の眼鏡姿が格好いいからといって 顔を赤くする弟は居ない・・・。 「いっいや、突然だったし、すげぇ似合ってるからびっくりしたんだ;;;」 「そうだよねー、すごい格好良いよねー」 「似合うか?」 今までじっと一護たちの様子を見ていた白哉が一護に話しかける。 「おっおう!似合ってるぜ兄貴」 「そうか」 常に無く動揺している一護に白哉はほくそ笑む。 暫くはこのアイテムが一護相手に活躍するだろう。 白哉の口の端が微かに上がっているのをみた一護の表情が 少しだけ青くなった。 END 眼鏡かけた兄様が書きたかったのです。 絶対似合うと思うんだよな〜〜vvv 本誌ではサングラスだったので、普通の眼鏡にして見ました(笑) 2005.6.16 |