帰り道








夕暮れ時。


水色たちと別れた後、一護は一人慣れた道を歩いていた。


秋も終わりかけ、そろそろ冬将軍の到来も近いだろうと感じさせる、ピンと張った冷たい空気が頬をなでる黄昏時、茜色に染まった空がひどく綺麗で、何時までも何時までも見ていたくなるような、不思議と透き通った空が広がっていた。


思わず立ち止まり、空を見上げていた一護の耳に、遠くでわが子を呼ぶ母親の声が聞こえた。
公園で遊んでいた子供を心配して、母親が捜しに来たのだろう。
何時までも遊んでいた子供を叱り付けるが、怒っていながらも、無事を喜ぶ様子が容易に察せられて微笑ましい。


ただ、そんな親子を見つめる一護の表情はどこか切ない。


ふとした瞬間、心に闇が広がる。
その闇は母が死んだあの日から一護の隣に常にあるもので、おそらく一生吹っ切れることの無い悔しい出来事だ・・・・。
あの雨の日、母が死んだのは自分のせいだ。誰がなんと言っても自分で自分が許せないのだ。
幼い日の自分が、霊と人間との区別が付かなかったせいで、母は死んだ。
今なら。今の自分なら、絶対に母を・・・。あの優しくて、明るくて、いつでも笑っていた母を絶対に守るのに。何故今ではなかったのだろう・・・。


それでも、今年の墓参りの日、一護を助けた母を誇りに思っていると言った一心の言葉で、かなり救われた。
普段はふざけた事ばかりしている父親だが、この時ばかりは心からこの父親を親に持てたことを感謝した。


自分の思いに囚われていた一護の前に、不意に影が落ちる。
何の気配も感じなかった事に驚き、反射的に顔を上げると、そこには白哉の顔があった。
思わず仰け反ってしまうほど近くにあった秀麗な顔に、慣れているはずなのに胸が高鳴る。


一護の驚きを知っていながら白哉は素知らぬ顔で言葉をつむぐ。


「帰るぞ」

「何で・・」

「迎えに来たに決まっている」

「そっか・・・・」


いつもなら、わざわざ迎えに来るなんて止めてくれ!と、羞恥に燃えながら抗議するところだが、今日に限っては素直に嬉しいと感じられた。
そして当たり前のように差し出された白哉の手も躊躇無く取る。
これも、いつもならば、外で男同士で手を繋ぐなんて恥ずかしくて出来ないと散々抵抗し、その挙句に疲れ果てたまま引き摺られるように帰るのに、今日は違う。


昔、母と二人しっかりと手を握りながら帰った道を、今は白哉と歩いている。
自分は今、本当に幸せだ。何故なら手を繋いでくれる人が居る。
涙が出そうになって思わずまた空を見上げると、
そこには、茜色から藍色へと移り変わりゆく美しい空が広がっていた。









END









手を繋いでいる二人を書きたかったのです。
この二人には何時までも手を繋いで歩いていて欲しいなvv

2005.5.30