お子様の逆鱗 若干12歳にして国家錬金術師の資格を取得した天才錬金術師エドワード・エルリック。 不可能なことなど何もないと思わせるほどの若さと才能に恵まれた彼であったが、 そんな彼にも深刻な悩みがあった。 それは、14歳の夏を最後に身長が一ミリたりとも伸びなくなった事である・・・・・。 只でさえ同じ年頃の少年達より小柄なのを(渋々ながら)自覚しているというのに、 それに輪をかけて身長が伸びなくなるなんて・・・! この赦し難い現実を直視出来ずに、身長が一番高いのは朝であるという事実を踏まえ、 エドワードは朝起きると直ぐに身長を測ることにしていた。 だが、そんな努力を嘲笑うかの如く、何度アルフォンスに確認してもらっても身長はいつでも同じ数値を示した。 屈辱である。 こんな憂鬱な行事に半年もの間、毎日毎日付き合わされているアルフォンスは心底気の毒である。 一ミリたりとも微動だにしない数値を告げる度、眉間の皺が深くなっていく兄に、 つい嘘を言いそうになってしまうのだが、バレた時が怖くてそんな事は出来なかった。 誰だって自分の身が可愛い。 たとえそれが鋼鉄の身体だとしても。 怯えるアルフォンスが毎日同じ数値を口にし始めて3ヶ月(!!!)が過ぎた頃、 エドワードの怒りは頂点に達し、とうとう爆発する時を迎えた。 ある冬の日の東方司令部の一室。ロイ・マスタング大佐の執務室から、かの大佐の悲鳴が轟いた。 「っぎゃーーーーー!!!や、止めろ!!止めるんだ鋼のっ!!!!」 会って間もなく。突然自らの右腕を剣に錬成して容赦なく切り掛ってきたエドワードの攻撃を何とか避けながらロイが叫ぶ。 「喧しい!!てめぇがムカつく事いうのが悪いんだろうがっっっーーーー!!!!」 「私が何を言ったって言うんだっ???何も気に障るようなことは言ってないぞ!」 まったく心当たりの無いロイが必死に反論をする。 「言っただろうがっ、俺が顕微鏡で見ても視認出来ないほどのチビだ!!って思いっきり気に障ることをーーー!!!」 「そんな事は一言も言ってなーーーーいっ!!」 必死に自らの無実を訴えるロイに全く取り合わず、エドワードは再度切り掛かりながら大佐の執務机を真っ二つに切り裂く。 「なっ何をするんだ鋼の!!こんな事したら後で私がホークアイ中尉に怒られるんだぞ!!」 自分の部下にこっぴどく叱られる事に怯える上司。 かなり情けない。 しかしロイは真剣だった。本来なら炎の一つでも盛大に出して反撃したいところだったが、 如何せん、此処は彼の仕事場であり、普段の怠け癖が祟ったのか、かつて無いほど大量の未決済重要書類に囲まれていたのである。 これらを跡形も無く燃やしてしまおうものなら、それこそホークアイ中尉の怒りは頂点に達し、生きていられるか確信は無い。 考えるだけで恐ろしい未来に怖気が走る。絶対に炎を出すわけにはいかない。 「けっ!てめぇなんざ中尉に撃たれて死んじまえば良いんだよっ!!」 「何でそんな酷い事を言うんだ鋼の!!私が一体何をしたって言うんだっ!?」 狭くは無いが広くも無い執務室の中を逃げ回りながら、ロイは再度疑問を口にしながら必死に言い募る。 そりゃ必死にもなるだろう。子供とはいえ相手は天才的な錬成技術と体術の持ち主である。少しでも気を抜こうものなら、いかにロイといえども無事では済まない。 というか確実に死ぬ・・・。 それに、炎での反撃を控えている最大の原因である重要書類が、先程からの攻撃のお蔭で無残な姿を晒し始めているのだ。何とかエドワードの怒りを静めなくては、今度こそ本当にホークアイ中尉に殺されてしまうだろう。 どちらにしても活路の少ないロイであった・・・。 「と、とにかく落ち着いて話し合おう!鋼の!そうすれば問題は解決する!」 「俺は話し合うつもりも許すつもりも全く無いぜっ。観念するんだな、大佐。」 そんなことを言われても、夢も野望もあるロイは、こんな所で理由も分からず死ぬつもりは全く無い。 事態収拾に窮したロイはプライドを捨て、なんとかこの情況を脱しようと隣室に居るであろう部下達に助けを求める事にした。 「だ、誰かっ!鋼のを止めるんだっ!!!」 恥も外聞も無く部下に助けを求める上司・・・。それを無情にも彼の部下達は黙殺した。 普段の行いの賜であろう。ロイは部下達の、対エドワード信頼を勝ち得ていなかった。 どうせ何時もの如く、ロイがエドワードを怒らせるような事を言ったのだろうと判断したのだ。 それに、怒り狂った鋼の錬金術師ほど手に負えないものは無い。 長い付き合いの中で彼らは学習していた。どんな事になっても責任は大佐が負えば良いのだ、と。 「何で誰も助けに来ないんだっ!!早くしないと本当に私は死んでしまうぞっ!!ついでに重要書類も燃えカスになってしまうぞっっ!!アルフォンス君もそこに居るのだろう!?君のお兄さんを止めてくれ!謂われない言い掛かりで襲われているんだ!!」 とうとうアルフォンスにまで助けを求める始末・・・。 なりふり構わない大人ほどみっともない者は無い。 騒ぎが始まって直ぐに隣の部屋へと避難していたアルフォンスは、 助けを求める大佐に同情しながらも、決して手を差し伸べようとはしなかった。 何故ならば、今日の兄は何があっても止める事は出来ないと確信しているから。 大佐は言ってはならない一言を口にしてしまったのだ。 それは・・・・。 『やあ、鋼の。久しぶりだな。元気にしていたかね?それにしても君は何時会っても全然変わらず可愛らしいねvv』 兄に恋慕している大佐が何気なく口にしてしまったその台詞・・・。 それはここ半年の間一ミリも身長が伸びず、鬱々としていた兄に対して絶対に言ってはいけない事だった。溜まりに溜まっていたイライラが大佐の一言で爆発してしまったのだ。 こうなったらもう止める事は出来ない。 大佐には気の毒だが大人しく死んで貰うしかない・・・。ご愁傷様。 「ぎゃーーーーーーーーっっ!!」 書類どころか自らの命の方が危うくなってきたロイに待っているのは絶望のみ。 周り中から見放されたロイに未来は無い。 |
END
ハガレンSS第1弾。
すっごくありがちなネタで申し訳ない;;;
でも書きたくなってしまったので取りあえず書いてみました;;;
特にカップリングは無いんですが、しいて言えばエド←ロイですかねv
2004.11.20
なっなんと!5年前に書いた鋼SSですーーー;;;
随分前にリンク外してたんですが、サイトのメインも鋼になってきたし、
読んだこと無い方の方が多くなっているだろうと思い、
今回発掘したので加筆修正の上載せてみました。
本当にありがちでたわいもない話ですが、これが正真正銘初めて書いた鋼SSですv
こうしてみると、エドが少将でも原作設定でも、うちのロイはエドワードには勝てないのだな
と言うことが分かりますね(苦笑)
2009/10/31