視線










『まただ』
一瞬イラっとしながらそんな思いが湧き上がる。



定例の隊長会に出席している剣八に、もうすっかり馴染みになってしまった視線が向けられている。
その視線は剣八が十一番隊隊長に抜擢され、瀞霊廷に来た時直後から始まった。
視線の主は三番隊隊長市丸ギン。その人だった。



普段は人を食ったような笑顔を貼り付けながらも特に剣八に対して気になるような素振りは見せず、他の隊長たちと同じように接していた。
だからこそ尚更、時々向けられる執拗な射殺すような視線が不思議でならなかった。
一体何故自分を見つめるのか・・・・。
聞けば済む事かも知れないが、自分でも判然としないながら、
何故か聞いたら全てが変わってしまうような、今までの均衡が崩れてしまうような、
漠然とした不安に襲われて、現状のまま放置しているのだった。



「他に何か意見はあるか?市丸はどうじゃ?」
山本総隊長の言葉がギンに向けられ、剣八に注がれていた視線が外された。
無意識にほっとため息をついた剣八は、
どうして自分が気まずい思いをしなきゃならないのかと腹立たしく、思わず舌打ちした。



結局それ以上の意見交換は無く、隊長会は終了となった。
堅苦しい事の嫌いな剣八は、さっさと身を翻し立ち去ろうとしたが、
「剣ちゃん、待ってや〜。一緒に帰ろ〜」
先ほどまでの不躾な視線の事など無かったかのようなギンの誘いにイライラしながら足を止めた。



「ガキじゃあるまいし何で一緒に帰らなきゃならないんだよ!しかもてめぇんとこの隊舎とは方向が全く逆だろが!!!」
「えー、いいやん。寄り道して遊んで帰ろ〜」
いつもなら軽く言い合いをしながらも最終的には剣八が押し切られ、なし崩し的にギンの思うとおりに事が運ぶのだが、何故か今日に限って剣八は、先程の不躾な視線に腹を立てると同時に微かな脅えを感じ、付き合う気にならなかった。
何故自分がギンに脅えているのか?
そんな自分にも腹を立て、その戸惑いを振り切るように声を荒げた。
「うるせぇ!嫌だって言ってんだろ!勝手に一人で帰れ!」
そう言い捨てると、その場にギンを置き去りにした。



ギンも特に深追いはせず、そのまま剣八が立ち去るのを見送った。
その瞳には例の突き刺すような視線が戻っていた。





いつかあの視線に言及した時、何かが変わる。
何も気付かない振りをしていなければ自分が壊れる。





いつかこの視線で絡め取り、逃げられないようにする。
何にも気付かない振りをしている彼に笑みがこぼれる。



掴まる。


手に入れる。


その時が訪れるのはもう直ぐ・・・。








                     END









ギン剣SS第2弾。
更に意味不明の作品に・・・(汗)
視線で殺す感じを表したくって、
シリアスにしたかったんですけど、
単に変な話になってしまいました・・・。
やっぱり文章書くのって難しいですね〜(>_<)
更なる精進に励みます!

2004.8.15