秋月 「でっけぇ月だなー」 ふと、何の気なしに見上げた空には、驚くほど大きな月が浮かんでいて、煌々とした光を放ちながら俺を見下ろしていた。 そういえば、今日は中秋の名月だとか何とか朝のニュースで言っていたのを聞いたような気がする。 まだ秋の気配も感じられない残暑の厳しい9月半ば。 縁側でのんびりお月見なんてとてもではないが出来そうもない。 まあ、家には縁側なんてないから最初から無理だけどな。 まん丸な月を見ながら、昔母さんが生きていた頃に、幼稚園の行事で月見団子を食べた事を思い出した。あの時食べた味も何にもしない団子が、不味くて気持ち悪くて、泣きながら母さんに抱きついた記憶が蘇る・・・・。 嫌なことを思い出した。 本当にガキの頃の俺は弱虫で泣き虫の甘ったれたガキだった。 首が痛くなるほどじっくりと月を見るのは何年ぶりだろう。っていうか初めてか? 最近は、見上げるといえば虚ばかりで、情緒も何もあったもんじゃない。 お陰で空を見るのが楽しくも何ともなくなった。 それが、ここ暫く虚の動きは影を潜めていて、久しぶりにのんびりした日常が戻ってきていた。 平和な世界ってやつを満喫してるはずなのに、何故か俺の気持ちは晴れない。 別に戦いを求めているわけじゃあない。ならどうして? 答えは分かってる。 きっと死神としての自分の存在価値が見出せないからだ。 死神でない時の俺はただの人間。人間にはあちらの世界との接点は何一つない。 本来なら人間である俺は死ななければ辿り着けない場所・尸魂界。 あっちの世界に属したいと心の奥底で望んでいるんだろうか。 そんな事は無い。俺の居場所はこの世界。此処でしかない。 そう思っているのは本当なのに、どうして気持ちが沈むのか・・・。 どんどん下降する思考に幼稚園児の頃と現在の自分がそんなに変わってないのかも、と思うと少し凹む。 流石に人前で泣いたり喧嘩に負けて泣いたりとかはしなくなったが(当たり前だ)、人恋しくて寂しくて堪らなくなる時がある。 求める対象は母親ではなくなったけど・・・・・。 こんな情けない自分が居ることを絶対に認めたくない。でも・・・。 首が疲れた俺は、いつもの川原に移動して寝転がりながら更に月を見ていた。 馬鹿みたいだけど、こうなったら飽きるまでトコトン見てやろうと思った。 たまにはこうやってぼーっとするのも悪くない。 家でも学校でも何故か俺の周りには五月蝿い奴が多い。 だから一人の時間を楽しむことが出来るのは貴重だ。 思考が下降するという副作用はこの際無視だ無視っ! なんにも考えないで見上げる月は、吸い込まれそうなほどデカくて明るい。しかもかかる雲もなく暗闇にぽっかりと浮いているなんて滅多に見られないんじゃないか? 遮るものが無い月の光は明るすぎて、空は澄んでいるのに星があまりよく見えない。 淡い白銀の神秘的な輝きに目が奪われる。月ってこんなに綺麗だったっけ。 人気のない川原では虫の声が微かだけど聞こえてきて、暑くても確実に秋は近づいてきてるんだなと感じた。こういうの風情があるっていうのかもしれないな。 俺には全然似合わねぇけど。 月の凛とした姿を見てると、誰かに似ているような気がしてきた。 綺麗な顔をして冷たそうな印象を人に与える男。 でもふとした時にこぼれる笑みは絶品で、いつまで経っても慣れずに赤面してしまう。 いつから会ってないんだろう。 会えないのはいつもの事だから仕方がない。でも、会えなくて辛いのは自分だけなんだろうな。 あいつは仕事が忙しくて俺のことなんて思い出しもしないんだろう。 会えないからさっきみたいな暗い思考が湧いて来るんだっ。 なんかムカつく。 俺だけがあいつに振り回されているような気がする。 実際、気がするだけじゃなく、本当に振り回されてるんだろう。 いつだって余裕たっぷりで自分の思うとおりに行動するあいつ。 俺の言うことなんて全く聞きゃしない。 何で俺が男なんかに振り回されなきゃならないんだ?普通、相手は可愛い女の子だろう。 しかも、最初に告ったのはあいつの方なのに、嵌ってるのは俺ばっかりな気がする。 何処が良くて付き合ってるんだろう・・・俺は。我ながら不可解だ。 あーもう!やめやめ!あいつのことを考えるのは止めよう。考えたって仕方ない。 会えるわけじゃないんだから・・・・。 綺麗だと思って見ていた筈の月が、いつのまにか憎らしくなっていた。 別に月のせいじゃないけど、こいつのせいであいつのことを思い出してしまったのは事実。 八つ当たりだけどもう見ていたくない。 帰ろう。 暫く空を見上げるのは止めよう・・・。 「白哉のばーーーっっか!」 END 白一?というよりは一護の独り言短文ですね;;; 脈絡の無い文章にいつもながらため息が出ます(苦笑) 月=兄様という安直な設定に我ながら赤面しちゃいます(>_<) ネタが欲しいっ!ネターーー!!! 2005.11.27 |