STRANGENOISE














ジリリリリリリリ・・・・・!
ジリリリッ、ジリリリリリリリンッ!!!

爽やかな日差しが襖越しに差し込む部屋の中に響き渡る破壊音。
布団から少し離れた机の上に置かれた目覚まし時計は、かれこれ10分も前から
律儀にも己の職務を果たしていた。

段々に大きく鳴るように設定されている目覚まし時計が、最大限の大音量で”これでもかっ!”
とでも言うように鳴っているというのに、その部屋の住人である一護にはその働きに酬いる気は全くないようだった。
誰もが思わず耳を塞ぎたくなるような騒音に眉一筋も動かすことなく寝入るその姿はいっそ見事だ。


この喧しさがいつまでも続くのかと思われた頃、すっと微かな音がして一護の部屋の襖が開かれた。
部屋に入ってきた人物は焦るでもなくゆったりとした足取りで褥へと近づき、寝ている一護の顔を覗き込む。
起きている時は刻まれている額の皺もなく、仰向けに寝ている一護の寝顔は何の屈託もなく幸せそうだ。
そんな一護の様子を暫く眺めた後、その人は傍らの机の上に手を伸ばし、
尚も存在を主張していた目覚ましを止める。
途端に訪れた静寂がその部屋の空気をひんやりとしたものに変えたのは気のせいだろうか。

活動を止めた目覚ましにも、入ってきた人物にも気づかず一護は尚も惰眠を貪る。
しかし、その幸福は次の瞬間に壊された。


ぼんやりとだが、一護は自分が目覚めかけていることに気が付いた。
ただ、その目覚めがいつもと違うような・・・。
何故かふぅっと意識が浮上すると共に何やら非常に息苦しい気がするのだ。
そんな事を思いながらもまだ眠りにしがみついていた一護だったが、とうとうあまりの苦しさに放棄せざるを得なくなった。


!!!!!!!
ガバッ!と起き上がろうとした一護は、自分の体がピクリとも動かないことに驚愕した。
そして次にキスされている事実にも気づき更に驚愕する。
自分にこんな事を仕掛けてくるのは一人しかいない。
それにしても寝起きを襲うとはどういうことだ。
一護は俄かに怒りが湧いてきて、自分に覆いかぶさっている人物の拘束から必死に逃れようとして暴れた。

「んんぅ・・・っ・・はなっ・・・うぅ・・ぐっ!!」

離せ、と言おうとして開いた唇から、逆に舌が差し入れられ、更に苦しさが増す。
あっという間に舌が絡め取られ歯の裏側を強くなぞられる。
慣れた感覚にぞくっとした快感が背筋を駆け上り、急速に反抗する力が失われていく。
舌を付け根から抜かれそうな勢いで吸われ、かと思うと一転して柔らかく唇を甘噛みされる。
蕩けるようなキスに夢中になり、本格的に没頭しようとしたその時。
今まで執拗に絡んでいた舌が何の未練もなく離れた。

「あっ・・」

思わず名残惜しそうな声を出した自分を自覚して恥ずかしくなる。
一護はバツの悪さを誤魔化すかのように、今まで自分を翻弄していた相手を睨み付け文句を言う。

「なんだよ白哉!朝っぱらからんな事すんじゃねぇよ!!!」

ようやく身を起こすことに成功した一護は、こんな理不尽な行為を仕掛けてきた白哉に怒りを顕にする。
しかし痺れたような舌で呂律が回っていない上に息を荒げて頬を染めた迫力のない抗議では怒鳴られた白哉が怯むはずもなく、はあはあと息をつく一護をじっと見つめる。
そしておもむろに口を開いた。

「目が覚めたか?」
「はっ?」
「目が覚めたか。と聞いている」
「そんなの見りゃ分かんだろうがっ」
「煩い騒ぐな」
「なっ!お前が悪いんだろう!何が五月蝿いだよ!」
「悪いのはお前だし、迷惑を被ったのは私の方だ」

意味が分からない・・・・・。
自分が一体何をしたと言うのか。
何で朝っぱらから寝込みを襲われなければならないのか。
一護は何故寝起きにこんな口論をしなければならないのか・・等々を自問する。
そんな一護の疑問を解消してくれたのは意外な人物だった。


「白哉様。一護殿は目覚められましたか?」
「ああ、起きた」
「それは良かった。一護殿、おはようございます」

その声と共に襖の外に立つ人物が部屋に入ってきた。
突然割って入った人物は朽木家の使用人である。

思い出した。
昨夜から一護は尸魂界にある白哉の屋敷に泊まりに来ていたのだ。
まあ夏休みの間の田舎訪問みたいなものだ。
まがりなりにも一応恋人同士と言うやつでもあるし・・・・時間があるときに側に居たいのは当然だろう。
間違っても淋しいなどとは面と向かっては言わないが・・・。

しかし。
だからといって何故朝からこんな事態になっているのかは相変わらず分からない。
昨夜は白哉の部屋で寝ろと言うのを振り切って一部屋都合してもらった筈なのに。

疲れる・・・。
そんな被害者意識的思考が一転したのはその直ぐ後だった。

「あの音は凄かったですねぇ。何事かと思いびっくり致しました」
「は?音?」
「はい。15分ほど前から突然ジリリリと音が鳴りはじめ、仕舞いには屋敷中に響くのではないかと思われる程の大きな音になったのでございます。なにしろ初めて聞く音でしたので、皆何事かと驚いた次第です」

にっこりと微笑みながら説明する初老の彼には全く悪気はない。
しかし、聞いていた一護は自分が掛けた迷惑にようやく気が付き居た堪れなくなる。
そうか。目覚まし時計か・・・・。
特に必要もないのに何故か現世から持ってきてしまった物だが、
この時計が自分の目覚めに貢献した事は未だかつて殆どない。
音の喧しさに耐えかねた遊子や夏梨が起こしてくれるからだ。
そして、ここでも同じことが起こったのだろう。
ただ、その起こし方が遊子達とは大きく懸け離れていた事だけは間違いない。

何もキスで起こさなくたって良いじゃないか・・・。
悪いのは確かに自分だが、直ぐ側に人が居たにも拘らずそんな非常識な行動に出た白哉に腹が立つ。
思わずキスに反応してしまった自分が恥ずかしかった照れ隠しもあり余計に反抗したくなるというものだ。
それでも、屋敷の者達には何の罪もない。謝るべきだろう。

「その・・悪かった。迷惑掛けちまったな」

白哉に素直に謝るのは癪なので、使用人の彼に向け謝罪する。
いいえ、良いんですよ。と言いながら何気なく口にした彼の次の質問に一護は大いに慌てる。

「それにしてもあれだけの音でも起きられなかったのにどうやって起こされたんですか白哉様?」
「ああ、それは・・くち・・・・」

わーーーーっと叫びながら一護が白哉の言葉を遮る。
ふざけんなこの男っっっ!キスしたとか言うつもりかよ!!!!
恥を知れ恥を!!!
非常識馬鹿白哉を黙らせるべく、焦りながら一護は何とか口を挟む。

「なっ、殴られたんだっ!ガツッと頭を殴られたんだよ!!!」
「そうなんですか?それは・・・頭大丈夫ですか?」

白哉が殴ったりするだろうか?
普段の白哉を知るだけに少し不思議に思いながらも、本人である白哉が否定しないので納得する。

「だっ大丈夫!そんなに強く殴られてないから」
「そうですか。それは良かった。ですが何かありましたら仰ってくださいね」
「お・・・おぉ」

一護は赤い顔を隠すように俯き、歯切れ悪く返答する。
くそっ!なんで俺がこんな目にと思いつつ、チラッと盗み見た白哉はどこか面白そうに一護の慌てぶりを眺めていた。
その白哉の表情に腹が立つよりも嫌な予感がする・・・・そう思った直後、予感は的中した。

「明日からは私が起こしてやろう。その方が屋敷の者も安心だろう」
「白哉様が直々にですか?私でよければお役目お受けいたしますが」
「いや、構わぬ。どうせ朝起きたついでに声を掛ければ良いだけだ。それか私の部屋に一護を移しても良いしな」

楽しそうな(そう見えるのは一護だけだったが)白哉の言葉に一護はヒクッと口の端を歪ませる。
絶対に死んでも明日からは自力で起きる。
そうでなければ今日と同じ目にあうのは確実だ。
毎朝あんな起こされかたをされたら堪ったものではない。


自分の身の安全のためにも何が何でも目覚まし時計で起きてみせる。
それが駄目なら寝るもんか。
何か激しく間違った決意をした一護を嘲笑うかのように白哉は余裕たっぷりだった。
これだから一護が居ると退屈しない。
ひっそりと笑む白哉は真っ黒だった・・・。







END








ありがちなネタですみません;;;
急に書きたくなったもんで選挙速報見ながら2時間くらいで書いちゃいました(苦笑)
拍手用に書いたのに少し長くなってしまいましたのでこちらにUPしてみました;;;
どうしても短く端的に書くことが出来ない・・・・。
短いけど心に沁みるような話が書いてみたいんですが、永遠に無理そう(>_<)
最後まで読んでくださった方ありがとうございますv



2007.7.29