出会い









「一護」

帰宅途中の一護の前に、ふわりと死覇装が舞い降りた。
急な訪れに一瞬ビクッとしたが、直ぐ気を取り直し一護は白哉の名を呼ぶ。

「白哉・・」

「久しいな。大事無かったか?」

「ああ。そっちこそ元気だったか?」

「変わりない」


淡々とした会話だが、二ヶ月ぶりの再会に一護の気持ちは弾む。
寂しかった・・・・。
そんな事は死んでも言えないけど、やはり嬉しさは声や表情に出てしまう。
つい話込みそうになって、一護はここが道の真ん中である事に気付く。
霊体である白哉と話していると一護は空中に向かって話してることになるので、周りからはかなり奇異の目で見られる。
場所を変えるために視線だけで肯き合い、二人無言のまま歩き始める。


隣に白哉が居る。それだけで嬉しい。
何も話さなくても共有できる沈黙が温かい。
こんな関係が何年続いているのだろう。
滅多に会うことが出来ない分、会えた時の喜びは大きい。
出来るだけ長くこの時間を過ごしたい。
二人の思いは一緒だが、その時間があまり無い事もお互いによく理解している。
だからこそ、無駄な時間は使えない。


今でこそお互い無くてはならない大事な存在だが、
二人の始まりが何時だったのか、何時から始まったのか、
今となってはもう分からない。







出会いは最悪。


ルキアを挟んで敵同士として出会ったのが最初だった。
お互いがお互いをまるで理解できず傷つけあった。
それぞれに自分の守るべきものがあり、貫き通すべき信念があった。


今でもそれは変わらない。
ただ、少しだけその対象が変わった。


一護は家族から白哉へ。
白哉は誇りから一護へ。


勿論、一護の守るべきもの。いや、守りたいものは今でも家族だ。
ただし、愛しいものは・・・・・・・。
もし、死ぬ時が来たら・・・その瞬間最後に思うのは白哉の事だろうと確信できる。


白哉は、貴族や死神としての誇りを投げ打ってでも手に入れたい大事なものがあると気付いた。
戦いの中で白哉にとって虫けらのように弱い存在だった一護が、自分と対等に戦えるまでに成長し、
得体の知れない力ではなく自分だけの力で向かって来た。
それが初めて一護という存在が白哉の心に鮮明に刻まれた瞬間だった。


『兄(けい)』


最後の戦いのさ中、初めて白哉が一護を『兄』と呼んだ。
うっすらと笑みを刻みながら・・・。


その瞬間。
お互いの視界の中に始めて相手の姿が何の歪みも無く映った。
一瞬間。あの時こそが本当の出会い。


いつしか離れがたい存在となった白哉と一護。
尸魂界と現世。
なかなか会うことは出来ないが、何時までもこんな幸せが続けばいい。









「白哉。今日は何時までいられる?」


寂しいと素直にいえない一護だが、今回はどの位の時間一緒に居られるのかが気になり、
人気の無い公園に着いた途端、とうとう我慢できずにタイムリミットを聞いてしまう。
一護の何となく心細そうな問いに白哉はゆるりと微笑する。


「寂しいのか?」

「さ、寂しくなんかないっ!」


図星を指された一護が慌てながら否定するが、真っ赤な顔でいくら否定しても説得力は全く無い。
分かっていながらも真っ赤になって焦る一護が可愛くて白哉はからかうのを止められない。


「そうか?では、もう帰らねばならないと言っても平気なのだな?」

「うっ、あ・・・当たり前だろ!」


そう言いつつ、もう帰らねばならないと聞いた途端にその表情は輝きを失う。
久しぶりに会えても一緒に居られるのは数時間のみ。
そんな逢瀬にはもう慣れたが、やはり寂しさは隠せない。
何時になったら時間を気にせずに会えるようになるのか・・・。
一護が死んで、上手い具合に尸魂界に行き、死神にでもならない限りそんな日は来ないだろう。
だからと言って自ら死を選ぶ事など出来るはずがないし、する気も無い。
白哉も許さないだろう。


沈んでしまった一護に白哉が手を伸ばす。


「どうした?私が帰っても平気なのだろう?」

「おぅ・・・」

「そうか。それは残念だな。私は寂しいのだがな」

「・・・えっ?えぇーー!!なっ・・何・・言ってんだ?」


思いがけない言葉を聞いた一護が驚きのあまり白哉を見上げる。
そこにはからかうような笑みを浮かべた白哉の顔があった。
騙されたと思った一護がカーーーッと顔に血をのぼらせて食って掛かろうとするが、白哉に制される。


「怒るな。嘘ではない」

「白哉?」

「今日はあまりゆっくりしていられないのは本当だ。もう帰らねばならない」

「そうか・・・」

「もう少ししたら手が空く。そうすればもっと時間が取れるようになる」

「おぅ・・・;;;」


恥ずかしく思いながらも何時までも意地を張っているのは時間の無駄だし詰まらない。
顔を赤くしながらも一護は素直に肯く。


「ではな、もう行く」


羽のようなキスを交わし、一瞬後には来た時と同じようにふわりと舞い上がり白哉は立ち去った。
白哉の去ったあとも一護は中を見上げ続ける。
たった30分ほどの時だったが白哉から思わぬ言葉を貰えた事が嬉しかった。





あの出会いは必然。
例え最初の出会いが辛く、今、思うように会うことが出来なくても、今は感謝している。
二人出会う事が出来た幸運に。









END











今週の本誌のあまりの萌えに耐え切れず、
一日で書いてしまいました;;;
だって兄様美しすぎるんだもんーーーーーーーvvvvv
白一に光明が差してきたんだもん〜〜〜!!!
そりゃ我慢なんて出来ませんよ!!!
しかし・・相変わらずのラブラブぶりに自分でも鳥肌が;;;;
でも、私が書くと何故かこんな二人になってしまうのです(>_<)
もっと厳しい兄様が好みなのにぃ〜〜〜;;;
はぁ・・・すみません。厳しい兄様は他サイト様で堪能してください;;;


2005.2.10